[ま]拡張現実の世界とスピード感あふれる作品/ジーン・マッパー @kun_maa
タイトルにあるとおり、遺伝子のマッピングを職業としている男を主人公とした物語。
舞台は、インターネットが崩壊し、遺伝子操作による食物の作製は現代よりもはるかに進み、あらゆるものが拡張現実に取り囲まれた未来である。
難解な文言がたびたび出てきて、戸惑うことが多いが、意味のわからない言葉は読み飛ばしても、スピード感を持って読んでしまうのが正解かもしれない。
ストーリーは謎の多い魅力的な脇役にも支えられて、適度な謎解きとスリルが楽しめる作品である。
難解な専門用語を除けば、文章は読みやすく、軽妙でつい作品世界に引き込まれてしまう魅力を感じた。
本書は、通勤途中などにiPhoneで書かれたということだが、軽妙でスピード感のある文体と引き換えに、練りに練られたストーリー、推敲を重ねた文章というものとはかけ離れたものであるという印象を持った。
確かにスピード感はあり、難解な言葉によりSF世界に導かれはするのだが、人物描写やストーリーの厚みという点ではどうしても底の浅さを感じてしまう。
それが、iPhoneによって書かれたことによるのか、著者の作風なのかはわからないが。
それでも、この物語によって展開される拡張現実の世界は魅力的であるし、遺伝子操作という分野の未来と危うさについて考えさせられる作品であることは間違いない。
小難しいことは言わずに、サクサクと読んでその世界観にひたるのがふさわしい読み方であり、楽しみ方なのかもしれない。
最後までお読みいただきありがとうございます。