こんにちは!旅が大好き @kun_maa です。
海外旅行へ行くときは飛行機を使いますよね。
短くても2〜3時間、長いと10数時間も飛行機の座席にいることになる訳ですが、たまたま隣り合わせた人とお話しされたことってありますか?
僕は人見知りなので、自分からは話しかけることができません。
でも相手から話しかけられて、楽しく過ごしたことが3回だけあります。
この時の話はこちら→[ま]チベット問題とある機内での会話 @kun_maa
3回目は、これから書こうとしているパンチパーマのおじさんです。
あれはもう8年ほど前になりますか・・・
ANAの成田発バンコク行きの飛行機に乗りました。
1人でタイへの旅の始まりです。
座席は最後部の2人掛けのシートの窓側でした。
出発時刻も迫り、大半の座席が埋まるなか、僕の隣の席はポツンと空いていました。
「ラッキー!バンコクまで2シート占領かも」などと、幸先のよい旅の始まりに心を躍らせていると・・
前方からずんぐりむっくりとしたサングラスのおっさんが通路を歩いてきます。
しかもパンチパーマ。
あー!こっちに来るなよ!と思っていると、あっという間に僕の隣の席にドカッと勢いよく座ったのでした。
(あ〜ぁ席が埋まっちゃったよ。しかもパンチかよ。)
そんな僕の気持ちなど知る由もなく、パンチは急いできたのか「あ〜暑ちぃ〜!」と言いながら手に持った夕刊フジで顔を扇いでいます。
(こういう輩には関わらないようにしよう・・)
ひとしきり扇いで落ち着いたのか、パンチは夕刊フジを思いきり広げて読み出しました。もちろん僕の席との仕切りの肘置きをなんの躊躇もなく占領して。
(は〜ぁ、最悪のスタートだよ。まったく・・)
パンチとひと言も交わすことなく、僕は窓の外をジッと見つめ、飛行機は定刻をやや遅れて、夕闇迫る成田空港を飛び立ったのでした。
パンチとの間に沈黙が続く中、CAがおつまみを配り始めました。
「あっ、ねーちゃんもう1つちょうだい!」パンチが隣で図々しいことを言ってます。
<パ>「なあ、兄ちゃんも食うだろ?2個もらっとけ!」
<僕>(ん?僕のことか?)「いや・・僕は・・」
<パ>「遠慮すんな!ほらもらっとけって!」
<僕>「はぁ、すんません」(なんなんだよ?)
これをきっかけにして、どこへ行くんだ?何しに行くんだ?独りか?初めてか?etc.
パンチから質問攻めに合いました。
パンチに話しかけられて無視するほどの度胸もないチキンな僕は、問われるままに答えていました。
そのうち飲み物のサービスが回ってきました。
パンチは当然のように「ビール2本!こっちの兄ちゃんにも!」と宣ったのです。
それからどれくらい飲んだでしょうか。
パンチはビールがなくなるとすぐにCAを呼びつけて追加注文。
その際は「JALはバーさんばっかだけど、ANAは若くて奇麗なねーちゃんだけだからいいよなぁ!!」なんて微妙なお世辞を言うことも忘れていません。
食事が配られる前にベロベロに酔うくらいには飲み続けました。
パンチはAさんといい、茨城在住。年に数回、仕事でバンコクを訪れるそうです。
日本とタイにそれぞれ奥さんがいるんだそうで、なかなか大変らしいです(もちろん、自業自得でしょ!なんてツッコミは酔っていても無理)
それ以外にも、バンコクでの人の案内や接待なんかも請け負うとか。
つい、それだけで食っていけるんですか?などと余計なことを尋ねると、まぁ他にもタイ絡みでいろいろと商売になることをやっているんだ・・と詳しくは教えてくれなかったので、それ以上は聞きませんでした。
食事はさすがに2つよこせとは言いませんでしたが、ワインは3本ずつくらい飲んだ気がします。
パンチは超ご機嫌の絶好調で、タイ人女性がいかに素晴らしく、いかに恐ろしいかなどの話を延々としていました。
僕はかなり酔っぱらっていて、(今日の宿もまだ決まっていないのにまいったな)などと思いつつ、タイの夜&女性専門ネタのパンチに対してタイの市場や屋台飯の魅力について熱く語ったのでした。
2人ともかなり酔っぱらい、大声で喋って笑う姿は、傍目には旅の同行者に見えたでしょう。
周囲の人たちもかなり迷惑だったんじゃないかと思います。
でも、パンチパーマに機内でもサングラスを外さず、首と指には金がキラリーンな酔っぱらいに注意をする人は皆無。
散々飲んで、食って、騒いで疲れた僕とパンチはいつの間にか仲良く眠りに落ちていました。
ふと目が覚めれば、バンコク到着まであとわずか。
僕は慌てて入国カード書き始めましたが、パンチは「そんなもんテキトーに書いときゃいいんだ」とか言いながら、あまり理解していないようで僕に書き方を聞いてきます(本当に何回も来ているのかよ・・)。
そんなことをしているうちに、無事飛行機はバンコクに到着。
入国審査の長い列を見たパンチは列に並ぼうとした僕に、「おい!こっちに来いよ!」とクルー用の入国審査に向かいます。
<僕>「いや・・ここは無理なんじゃ・・」
<パ>「大丈夫だよ!バカヤロ!」
・・・さすがにこんな変なクルーはいるハズもなく、タイの入管もそこまで甘くありませんでした。
パンチと僕は冷たい表情の係官に手で追い払われ、すごすごと外国人用の列に戻るのでした。
無事に入国審査を通過したパンチと僕。
僕はここで別れて自分の旅に出発するつもりでした。
じゃあここで・・と言いかけた僕にパンチは「兄ちゃん、今日は予定ないんだろ?お前のこと気に入ったから、今から夜のバンコクを案内してやるよ。駐車場に迎えが来てるから、一緒に来い!」と言い放つのでした。
言われるままに空港ビル地下の駐車場に向かうと、待っていたのは黒塗りのベンツと、サングラスをかけた怪しげなタイ人運転手。
(あれ?ヤバいかな?もしかしてどこかに連れて行かれて身ぐるみはがされる?)という不安が頭をよぎりましたが、ここまで来たら引き返せません。
笑顔を見せない運転手に、後部座席に押し込まれ、パンチと僕を乗せた黒塗りベンツは夜のバンコクの中心部へとスピードを上げて向かったのでした。
着いた先はバンコクのタニヤという日本人相手のクラブが軒を連ねる歓楽街。
ご存じない方のために、wikipediaによると、
<パ>「おう、着いたぞ。ここは日本の銀座みたいなもんだからな」
<僕>「銀座で飲んだことないんですけど、高いんでしょ?」
<パ>「高いぞー。すげー高い!」
(ヤバいな・・もしかしてカモにされるのか?)
運転手がドアを開けてくれて、外に出るように促します。
荷物はトランクの中に入ったまま。
(これでバッくれられたら明日から着替えに困るなー・・・)
連れて行かれたのは日本語で「天使」と書かれた店。
入るときれいなおねーさんがいっぱい出迎えてくれました。
なぜか運転手もいっしょに入店し、1人に1人女の子がつきました。
たしかにカメラ片手に市場を這いずり回り、屋台飯やら寺やら遺跡に夢中になっているいつものタイとは別世界がそこには広がっていました。
日本語も通じるし、なんだかいい匂いはするし、女の子はみんなきれいで優しいし。
トイレに行きたいけど、トイレに行ってる間に僕だけ残して逃げられるかもしれないと思うと、恐くてトイレにも行けません。
いつどうやってカモにされるのかとおびえつつも、ガンガン飲んでいるうちにどうでもよくなってきました。
全額盗られても数万円だ!こうなったらとことん飲んでやる!と開き直りました。
いいかげん足腰立たないくらい泥酔し、トイレに行っている間に逃げられることもなく、今日の宿が決まってないと言うと車でなんだかわけのわからない薄暗いホテルに連れて行かれてそこで解放されました。
おまけに別れ際には、「なんかトラブったらすぐに電話しろよ」とタイでの携帯電話の番号までくれてパンチは去っていきました。
もちろん、荷物も金も命も取らずに。
なんだよ、パンチいい奴じゃないか。
翌朝は、ひどい二日酔いで自分がどこにいるのかもわからないという困った状況で目覚めましたが、いい体験をしたと思っています。
一人旅をする時は、知らない人にホイホイついていくのは当然危険を伴います。
でも、すべてを警戒して斥けていると旅はつまらなくなります。
そこのさじ加減が難しい所ですが、こういうこともあるからやっぱり旅はやめられません。
残念なことにその後は、旅先ではよく話しかけられるのですが機内で隣り合わせた人から話しかけられたことは一度もありません。
旅先で知り合った人と食事をしたり、飲みに行ったり、宿をシェアすることもありますが、そういう場合の判断も難しいですね。
なお、あくまでも僕の実体験なので、行動する際は自己責任でお願いします。
タニヤの「天使」で記念撮影www