こんにちは!「思う」ことと「考える」ことの違いがいまだにわからない男 @kun_maa です。
この本は、14歳(中学生だね)を対象に書かれた本ですが、僕は45歳です。
なぜ、そんな年齢の男がこの本を手に取ったのか。
「人は14歳以後、一度は考えておかなければならないことがある」
これは本書の帯に記された言葉です。
この帯の言葉を読んだときに、「ああ、僕はいままできっとこの考えておかなければならないことを考えてこなかったんだな・・」とふと思いました。
気がつくと本書を手にしてレジに並んでいました。
考えるとはどういうことか、死をどう考えるか、自分とはなにか、心はどこにあるのか、生きる意味とは何か、自由とは何か、家族とは?社会とは?規則とは?恋愛と性、本物と偽物、理想と現実とはどういうことか。
著者は、答えが容易には見つからないであろう数々の問いを、そしてとても大切な問いを読者に突き付けます。
これらの問いについて本書に答えはありません。
考えるためのヒントだけが優しく添えられているのです。
そして「自分の頭で考え続けなさい」と、繰り返し「考える」ことの大切さを説きます。
いくつか本文から抜き出してみましょう。
”生きていることが素晴らしかったりつまらなかったりするのは自分がそれを素晴らしいと思ったり、つまらないと思ったりしているからなんだ。だって、自分がそう思うのでなければ、いったい他の誰が、自分の代わりにそう思うことができるのだろうか。”(P.5)
”悩むっていうのは、どうすればいいのかわからないってことです、と君は言うね。そうだろう、君はわからないから悩んでいるんだ。でも、どうなんだろう、もしそれがわからないことなのだったら、君は、悩むのではなくて、考えるべきなんじゃないだろうか。あれこれ思い悩むのではなくて、しっかり考えるべきなんじゃないだろうか。考えるというのは、それがどういうことなのかを考えるということであって、それをどうすればいいのかを悩むことじゃない。”(P.9)
”完全な親なんか、人間の世界には存在しないんだ。完全な親であることができるのは、動物の親だけだ。なぜなら、彼らの目的は生命を全うすることだけだからだ。でも、人間はそうじゃない。生命としての人生をどんなふうに生きるのか、それを考えてしまうからだ。人生の真実とは何なのか、死ぬまで人は考えているのだから、その限りすべての人間は不完全だ。どうして君の親ばかりが完全であるはずがあるだろう。”(P.76)
”自分がしたいことをすることが自由であるということだとする。そして、人が自分がしたいことをするのは、それが自分にとってよいと思われるからするのであって、自分にとって悪いと思われることはしないのだったね。でも、人はそれが自分にとってよいと思われるからするのだけれども、それが本当は自分にとってものすごく悪いことで、そのことを知らないから、それをよいことだと間違えてするとする。だとすると、このとき人は、自分にとって悪いことをしているわけで、決してよいことをしているわけではない。しかし、人は常に自分にとってよいことをしたいはずなのだから、よいことではない悪いことを、知らずにしているその人は、本当は、自分がしたいことをしているのではないということになる。自分では、自分は自分のしたいことをしていると思っているのだけれども、本当は、自分がしたいことなんかしていない。自分がしたいことをしていないのだから、自由ではない。だから、悪いことをすることは自由ではない。悪いことをする自由なんか、ない、と、いうことになるね。”(P.167)
”宇宙が、ただそのようにあるように、人生も、ただそのようにあるだけではないだろうか。人生には意味も理由もなく、ただそのようにあるだけであっては、なぜ困るのだろう。”(P.182)
著者は、多くの人が当たり前だと思っている前提について、よく考えることが必要だと言います。
自分についてあれこれ思い悩む前に、そもそも「自分」とは何なのかについて考えることが大切なのだと。
自分が存在しているということ、それは奇跡そのものであり、そして自分が存在しているということ自体の驚きの感情を失うのでなければ、苦しみの意味や理由を求めて悩むことは少なくなるし、人生が空しいだなんて思うこともなくなるのだと言っています。
そして、生きていることそれ自体が謎なんだということを知って生きるのと、知らずに生きるのとでは、人の人生は全く違ったものになるのだと。
また、読者に向けてこうも言います。
「一通り読んで、ハイそういう考え方もあると知りましたというのでは、何を知ったことにもならない。もし君が、この本に書いてあることを自分で考えて、自分の知識として確実に知ったのなら、君の生き方、考え方は必ず変わる。変るはずなんだ。本当に知る、『わかる』とは、つまり、そういうことなんだ」(P.196)
青少年向けの哲学書という形をとっていますが、僕自身はかなり価値観を揺すぶられました。
本書は、大人も含めた読者が実際に自分の頭で考え、哲学を通して自分の生き方を変えていくことを目指して書かれた本だと思います。
多感な中学生はもちろんのこと、多くの悩める大人たちにこそ手に取ってほしい一冊です。