[ま]ぷるんにー!(พรุ่งนี้)

ぷるんにー(พรุ่งนี้)とはタイ語で「明日」。好きなタイやタイ料理、本や映画、ラーメン・つけ麺、お菓子のレビュー、スターバックスやタリーズなどのカフェネタからモレスキンやほぼ日手帳、アプリ紹介など書いています。明日はきっといいことある。

[ま]「中国化する日本」ってどういうこと? @kun_maa

こんにちは!読書大好き、中国人は苦手な男 @kun_maa です

皆さん歴史は好きですか?
僕は戦国時代や幕末の動乱期の歴史は男のロマンを感じてけっこう好きです。
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でも、戦国時代とは要するに夢あふれる天下統一のビジョンなんて誰も持っていなくて、餓死寸前の難民同士が血で血を洗う略奪合戦をしていたのが真の戦国時代だったのですとか、日本型の近世社会の中で飼い殺しにされて「このままではやがてジリ貧」が見えていた下級武士層、特にその次男三男が平素の憂さ晴らしに暴れ回っていたというのが幕末の動乱の真相ですなどと本書で言われてしまうとロマンのかけらもなくてびっくりさせられます。

 
この本は、そんな学校で習ったり司馬遼太郎歴史小説で得た歴史観をすっかり変えてくれるおもしろい視点で書かれた本です。 

タイトルの「中国化」とは日本が中国に侵略されて中国の一部になるとか、華僑系ファンドに日本企業が乗っ取られるとか、水源地を買い占められているとかそういう話ではありません。

この本での「中国化」とは、日本の統治や経済などの社会のあり方が中国社会のあり方に似てくることを意味しています。
 
従来の歴史では、近代化とは西洋化を意味していたと思いますが、そうではなくて、中国こそが真っ先に近代化を図った国だというのです。
西洋では宗教改革大航海時代以降を近世と呼びますが、中国ではそれよりもかなり早い約1000年前の宋朝の時代以降が近世なのです。
 
では、その宋朝の時代になにが起こったのかというと、身分制度を廃して科挙制度を導入し、政治的には中央集権体制を果たしました。
経済・社会的には貨幣経済の導入・自由化、身分・職業の自由などを果たし、皇帝以外に世襲はない実力に見合った地位や収入が得られる実力主義が出現したのです。
 
日本はそれまで遣隋使、遣唐使などを派遣して中国の制度を導入してきたにもかかわらず、宋朝時代の制度は取り入れることができませんでした。
 
なぜかというと、科挙制度を取り入れる技術がなかったこと(科挙制度を実施するには勉強をするための書物が広く一般に行き渡るほどの印刷技術が必要だった)に加え、平安末期に宋朝との貿易を基に貨幣経済を中心に宋朝の手法を押し進めようとした平家が、従来型の農業中心の荘園制度を維持しようとする貴族や寺社と組んだ源氏との闘争に敗れたことがあげられています。
 
平家が破れたことにより、日本は宋朝と疎遠になり、貴族や武家が権力を得たために強力な中央集権国家は成立せず、最終的に江戸時代=鎖国化で安定した時代が長く続きました。
改革派が平家で、守旧派勢力が源氏だったなんて、自分の今までのイメージとは大きく異なり驚きです。
 
本書における「中国化」の対立語は「江戸時代化」です。江戸時代は封建制・身分制の維持により「イエ」「ムラ」単位でのセーフティーネットが用意され、なんとか食べていける時代だったのです。
日本は明治維新で「西洋化」の名のもとに内実は「中国化」を果たす方向に進んでいきます。
しかし、地域利権や「イエ」単位による保護を失う「中国化」という実力主義の社会は、日本人にはすんなりと受け入れがたいものであり、選挙制度を通じた地域利権の推進や「イエ」に変わり「会社」が個人を守ってくれるという「再江戸化」が進んでいきます。
 
明治から昭和にかけての歴史はこの「中国化」と『再江戸化」のせめぎ合いの中で推移しながらも、「再江戸化」が優位を保ってきたものなのです。
それは日本という世界で最も成功した「社会主義国家」の形成につながっていきます。
護送船団方式」による国家の企業保護、終身雇用を前提とした企業による個人の保護、国民皆保険制度や年金制度、生活保護などによる国民の保護などあげればきりがありません。
 
ところが、今度は世界が「中国化」し始めたのです。
新自由主義の名のもと規制緩和が進みます。規制緩和既得権益の喪失と実力主義社会の到来を意味します。
そんな中、中国は飛躍的な躍進を遂げ、すでにGDPでも日本を抜き世界第2位となっています。
その要因は1000年以上も前の宋朝時代の徹底した近代化(「中国化」)が、現在の社会・経済制度にすでに適合していたからです。
中国が西欧に追いついたのではなく、世界がようやく「中国化」に追いついたと言うことです。
 
社会の変化により、既に「イエ」「ムラ」のセーフティーネットを失っている日本は、それに変わるセーフティーネットとしての終身雇用制度の崩壊、国民皆保険制度・年金制度の破綻の恐れを迎えて、今後どのような社会を目指していくのかが問われています。
いよいよ日本も『中国化」していくしかないのではないかというのが本書の問いかけであり、それに対するおもしろい道筋を示しています。
 
著者は、せっかく高邁でスケールのある憲法をもっているのだから、それを核にして「ジャパニズム」として主張すべきは主張し、積極的に優秀な移民を受け入れ、どうせ世界が「中国化」するのならば、そのなかで日本が「中華」になることを目指すべきではないかと言っています。
 
また、逆に「中国化」をせず、無理矢理「江戸時代化」を進めようとすれば、それは「北朝鮮」のような国にならざるを得ないとも述べています。
 
自分の今までの歴史の見方を大きく変えさせられる興味深い視座で書かれた本でした。 
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