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[ま]ぷるんにー!(พรุ่งนี้)

ぷるんにー(พรุ่งนี้)とはタイ語で「明日」。好きなタイやタイ料理、本や映画、ラーメン・つけ麺、お菓子のレビュー、スターバックスやタリーズなどのカフェネタからモレスキンやほぼ日手帳、アプリ紹介など書いています。明日はきっといいことある。                     

[ま]自分が死んでいることに気がつかない @kun_maa

まだ学生の頃、住んでいる町の小さな学習塾で講師のアルバイトをしていた。

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学習塾と言っても大手のように立派な教室があるわけではなく、借り上げた民家の部屋が教室代わりというとてもこじんまりとした塾で生徒数もそれほど多くはなかった。

どちらかというと進学塾というよりは、あまり勉強が得意ではない子をターゲットにした補習塾のようなものだ。それほど学習レベルが高くないので僕でも講師が務まったくらいなんだから。

 

講師は全員が当時の僕のように大学生だった。本業で教えているのは経営者である塾長くらいのものだ。この塾長が少し変わっていて、見た目は外国人と日本人のハーフのような英語教師なのだが彼の操る英語はお世辞にもネイティブの発音とは程遠いものだった。そして、元教え子だという男をよく塾に連れてきていた。その男は講師をやるわけでもなく一体なんでいつも塾にいるのかわからない不思議な存在だったのだが、今にして思えば塾長もその男もちょっとゲイっぽかったので愛人だったのかもしれない。

 

この塾にはそんな塾長の男の愛人(おいおい決めつけたよ...)の存在以外にも不思議なことがあって、玄関には必ず盛り塩がしてあり、いたるところにお札のようなものが貼り付けてあった。最初は受験生用のゲン担ぎか何かだと思っていたのだけれど、いくら何でもやりすぎな感じがあって、それにそのお札が合格祈願というよりは魔除けのような不気味な感じもしていて少し怖かったんだ。

長くバイトをしている先輩講師に何となく聞いてみたときには、少し慌てたように不自然なごまかし方をされたので、あまり話題にしてはいけないことなのかもしれないと思い、なんとなくそれ以上誰かに理由を聞ける雰囲気ではなくなってしまったんだ。

 

その後も特に何か不思議なことが起きるわけでもなく、次第に男の愛人の存在もお札のこともあまり気にならなくなっていった。

ところがアルバイトを始めて半年ほどしたある日、塾長主催の飲み会でのことだった。

それまでも時々、塾長主催でアルバイトにご馳走をしてくれる飲み会があったのだけど、その日はいつもとちょっと様子が違った。

 

最初は普通に飲んでいたのだが、ちょっと話しておきたいことがあると塾長が真面目な顔で口火を切った。

それは以前、講師のアルバイトしていた男子学生の話だった。

とても優秀な学生だったらしくて、生徒たちからの評判も講師仲間からの評判も良かったそうだ。同じ講師のアルバイトの女子学生と付き合っていて、それはもう塾の中でも公認の仲睦まじいカップルだったという。

 

そんな彼が通学途中にバイクで事故って突然亡くなった。ほぼ即死だったらしい。

それから塾に不思議なことが起こり始めた。

誰もいないはずの教室の電気が点いたり、閉めたはずの玄関が開いていたり、生徒が突然具合が悪くなったり、誰もいないトイレから音がしたりとどうも様子がおかしい。

そして死んだ彼と付き合っていた女子学生が塾で彼を見たと言って倒れてしまった。

 

あまりにも不思議なことが続くので心配になった塾長が霊媒師に相談したところ、バイク事故で即死した彼が自分が死んだことに気づいてないため生前のように塾にきているのだといわれたらしい。そう言われれば確かに不思議なことは生前の彼のシフトの日に限って起きていた。

 

その霊媒師が信用できるのかどうか、どういう方法でお祓いをしたのかは僕には知る由もなかったが、とにかく塾にあった彼の私物は全て処分されて何らかのお祓いらしい儀式も執り行ったようだ。

それ以来塾の玄関には欠かさず盛り塩をし、お札を貼りまくったのだそうだ。その後不思議なことは起こっていないというが今ひとつ歯切れの悪い言い方に僕はまだ終わってないんじゃないかという疑念を抱いた。

その当時も一人で塾に残ることは禁止されていた。

最後の戸締りなどは必ず2人以上で行うように僕がアルバイトをしていた時にも徹底されていた。単に防犯上のためかと思っていたのだがそうではなく心霊現象を心配した上でのことだったというわけだ。

 

彼が死んだのは、僕がアルバイトで働き始める2年ほど前のことらしい。そのうち塾長から説明をするから新しいアルバイトには聞かれてもごまかすようにと事前に事件のことを知っている講師たちには箝口令がしかれていたのだ。

その不思議な話を聞いた後、僕は授業中に時々何かがそばにいるような不思議な雰囲気を感じたことがあったのだけど、きっとそんな話を聞いたからなのだと思う。気にしすぎのビビりってやつだ。だいたい僕には霊感ってやつがないのだから。

 

それにしても自分が死んだことに気がつかないってどんな感じなんだろう。

誰からも無視されて不思議に思うのだろうか。

もし友人や恋人みたいな親しい人が近くにいなくて、普段からほとんど誰とも関わりのない生活をしている人が突然死んだら、自分が死んだことに気づくチャンスはあるのだろうか。

あなたは自分が確かに生きているんだと自信をもって即答できるだろうか。その根拠を示すことができるのか。

僕はどうだ。僕は本当に生きているのか。その根拠は何だろう。もしかして僕が現実に生きていると思っている世界の全てが死人や死んだものだけで構成されているのだとしたらどうだ。眠っている間に核ミサイルが落ちてみんながみんな死んでいることに気がついていなかったとしたら......

 

そういえばこの人も自分が死んでいることに気がついてないのではないだろうか。 

kun-maa.hateblo.jp

 

先日、久しぶりに塾のあった場所を訪れた。そこにはすでに以前の建物はなく、別の家があって知らない人たちが住んでいた。

あの塾がどうなったのかは知らない。

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