[ま]ぷるんにー!(พรุ่งนี้)

ぷるんにー(พรุ่งนี้)とはタイ語で「明日」。好きなタイやタイ料理、本や映画、ラーメン・つけ麺、お菓子のレビュー、スターバックスやタリーズなどのカフェネタからモレスキンやほぼ日手帳、アプリ紹介など書いています。明日はきっといいことある。                     

[ま]世にも奇妙な人体実験の歴史/好奇心に駆られたマッドサイエンティストたちの軌跡 @kun_maa

科学の進歩のためには、どこかのある時点で誰かが命をかけなければ先に進むことはできないというポイントがあるのだろう。

本書はそんな命をかけなければならないポイントで、自らの命をかけて「自己実験」を成し遂げてきた多くの科学者、医師、軍人たちの物語である。

世にも奇妙な人体実験の歴史 (文春文庫)

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タイトルにある「人体実験」という言葉は生々しい。ともすればナチスの行った人体実験や日本軍の731部隊などを思い出す人も多いかもしれない。

しかし、本書が主役として取り上げる人体実験とはこれらの非人道的な人体実験とは似て非なるものだ。

自分の研究のために他人を犠牲にすることをためらわない非道な輩が行った人体実験ではなく(そういう実験についても批判的に一部取り上げてはいるけれど)、その真逆とも言えるような自らを人体実験の「材料」として使った者たちによる実験の数々である(中には自分だけではなく、家族や弟子を巻き込んでいる人たちもいるけど・・まあそれは身内だから多めに見よう)。

本書の「はじめに」では次のように彼らを紹介している。

科学の名の下に、彼らはコレラ菌入りの水や塩酸、その他口に出して語るのもはばかられるようなもの(これから、それらについて詳しく語ろうと思っているのだが)を飲み込んできたのである。

どうして彼らはそんなことをすることになったのだろう。これは、利他精神と虚栄心、勇気と好奇心の奇妙な物語である。そしてもちろん、愚行の物語でもある。(P.9〜10)

ここで取り上げられている実験者たちの行動は凄まじい。

淋病と梅毒が単に進行段階が異なるだけで同じ病原菌からなるいう自らの仮説を実証するために自分のペニスに傷をつけて淋病患者の膿をそこに塗り付けた外科医。 

住血吸虫の感染源を確定するために、感染者から採取した住血吸虫の成虫を飲み込み続けた医師。

コレラは細菌感染による病気ではないという自説を証明するためにコレラ菌を飲み干した老医師。

黄熱病の伝染経路を明らかにするために患者の吐き出す黒い吐瀉物を飲んだ医学生

ピロリ菌が十二指腸潰瘍や胃潰瘍の発生に関係していることを検証するためにピロリ菌の培養液を飲み込んだ微生物学者。

特発性血小板減少性紫斑病や白血病の原因を探るために患者の血液を自らに輸血した医師たち。

自分の身体を使って、心臓まで届くカテーテルを開発した医師。

水中爆発の人体へのダメージのあり方を研究するために自ら何度も水中爆発を体験した生理学者。彼は潜水艦から潜水具なしで深海を浮上する技術のためにも命をかけている。

ビタミンC不足と傷の治癒力の関係を明らかにするために自ら死にかけるほどの食事制限による実験を行った研修医や、7ヶ月もの食事制限により意図的に葉酸欠乏状態になって自らの仮説を証明した血液疾患研究者。

本物の毒ガスを使って効果的なガスマスクを作るために親子で肺をボロボロにしてまで取り組んだ生理学者たち。

巨大な気球で成層圏に到達し、酸欠で死にかけた又は死んでしまった科学者たち。

これらは、本書に載っている「マッド・サイエンティスト」たちのほんの一部だ。

 

え?マジで?と思うような話や、読んでいるだけで吐き気をもよおすような話のすべてが実話である。

彼らの勇敢な自己犠牲の上に成り立った実験の成果がどれほどの恩恵を人類にもたらしたのか、その貢献度は計り知れない。

しかも一部の有名な者を除いて、ほとんどの者が一般的には名も知られていないという歴史に埋もれた悲しき存在。

 

それでも彼らを危険な実験に駆り立てたのは、人類の進歩のための使命感というよりも恐ろしいほどの好奇心にこそあるのだなってことが本書を読んでいるとよくわかる。

いわゆる使命感だけじゃこんな恐ろしいことやってらんないって。

好きでワクワクするから、危険なことだとわかっていても自らを抑えられずに自分の身体を使ってこんな恐ろしいことやあんな危ないことやウゲッって気持ち悪いことに飛び込んで行けるんだよなあと思う。

 

本書は人間の好奇心ってマジですごいぞって思わせてくれる「特攻人体実験野郎」たちの軌跡の本である。

タイトルはかなり「トンデモ本」っぽいけど決してそんな類いの本ではない。

登場人物たちはかなりイっちゃってるけどね。

好奇心に駆られたマッドサイエンティストたちが繰り広げる驚きの世界を垣間見ることができるおもしろい本であることは間違いない。 

 
世にも奇妙な人体実験の歴史

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