[ま]ぷるんにー!(พรุ่งนี้)

ぷるんにー(พรุ่งนี้)とはタイ語で「明日」。好きなタイやタイ料理、本や映画、ラーメン・つけ麺、お菓子のレビュー、スターバックスやタリーズなどのカフェネタからモレスキンやほぼ日手帳、アプリ紹介など書いています。明日はきっといいことある。                     

[ま]ネパールの怪しいスキヤキ/僕はなんの肉を食べたんだ? @kun_maa

あれはもう20年以上昔のこと。

ネパールを2週間ほどひとりで旅したことがあった。のんびりと、それでいて毎日がとても刺激的な旅も残すところあとわずかというときのことである。

僕はカトマンズ市内の中心地から3キロほど離れた小高い丘の上にあるスワヤンブナートという仏塔を訪れていた。この仏塔は市内にあるボダナートという仏塔に比べると小さなものだが、丘の上にあるので見晴らしはよく、猿も参拝客も多いちょっとカオスな雰囲気はネパールらしくて好きだった。

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一通り参拝や見学も済ませて、帰ろうとしたときに声をかけてきたのが「ビランドラ」という名の青年だった。本名かどうかは知らない。

彼は日本語は話せないが、英語はぺらぺらで外国人と友だちになりたいというネパールではよくいるタイプの調子のいい奴のようだった。

 

積極的に観光スポットを回ろうという「観光客」にはなりきれなかった僕には時間だけがたっぷりとあったので、彼の話を聞きながら適当に返事をしていた。心の中ではいつショッピングや観光に行こうと言い出すかなと思いながら。

案の定、今から自分が市内を案内するから観光に行かないかとのお誘い。

今日は忙しいからダメだなって答えたら「じゃあ明日の午前10時に◯◯の前で待ち合わせしよう。カトマンズを案内するよ」と言い返してくる。

 

まあ、それほど危険な香りのする奴でもなかったので「ガイド料は払わないぜ。それでもいいなら明日会おう」と言うと「ガイド料なんていらいよ、マイフレンド。ノープロブレムだ」と彼は答える。

めんどくさい奴らが必ず使う「マイフレンド」と「ノープロブレム」の2語が入っていた時点で僕は約束をすっぽかすべきだったのかもしれない。

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翌日、約束の時間に指定された場所に行くと、彼はすでに来て待っていた。ネパール人にしては珍しい。それだけやる気満々ってことか。

すぐに何か仕掛けてくるかと思ったが、予想に反して旧市内の町並みを適当にガイドしながら案内してくれる。

 

もしかして僕の勘が外れて意外といい奴なのかもしれないなと思い始めた頃、突然1軒の土産物屋に連れ込まれた。

彼の友人が経営しているというその店は日本のアジアン雑貨を扱う店とも取引があるそうだ。日本人は大好きだから今日は特別に「友だちプライス」にしようじゃないか。だから何か買って行かないかと。

メインは布製品や衣服類で、値段を聞くと当然のことながらどれもすっげー高い。

店主曰く「とてもクオリティが高い製品で日本でも売っているものだ。日本じゃこの値段の倍以上するぞ」ということらしい。

ちょっといいなって思った服もあったのだけど、やっぱり高すぎる。カトマンズの一般的な土産物屋の数倍はする値段だ。さすが「ともだちプライス」じゃないか。

 

何も欲しいものがないよと告げて店を出ると、ビランドラが後ろから慌てて追いかけてきて「なんで何も買わないんだ。せっかく友だちプライスで買えるのに!」と必死の形相で文句を言ってくる。

あまりいつまでもぐちぐちとしつこいので「俺にショッピングをさせるつもりならここでお別れだ。ありがとな」と言って足早に立ち去ろうとした。

やや慌てた様子で追いかけてきた彼は、物を売りつけてマージンを稼ぐことを諦めたのか「わかった。もうショッピングには行かない。そろそろ昼飯を食べないか?」と何事もなかったかのように平然と聞いてくる。まったく懲りない奴だ。

「何を食べるんだ?」と聞くと「スキヤキ」とちょっと投げやりに答えてくる。

 

スキヤキだと?ネパールはヒンドゥー国家で牛は神聖視されているはずだが......

ここで興味を隠しきれないのが僕の悪いクセだ。

連れて行かれたのは、荒れ地の中にひっそりとトタン板で囲った掘建て小屋。僕がもしひとりで店の前を通ってもここが飯屋だとは気がつかないだろう。

てっきり高級店に連れて行かれてボラれるのかと思ったがまったくの予想外だった。

 

その店にメニューなんてものはなく、みすぼらしい格好をした男たちがみな同じ肉の煮物と米を黙々と食べていた。

注文するまでもなく僕とビランドラの前に置かれる同じ料理と米。

香辛料が効いたカレー味のスキヤキだ。「何の肉なんだ?」と聞いてもビランドラは怒っているのか答えてくれない。

2人で黙々と飯をかき込み、支払いは当たり前のように僕にさせて店を後にした。

すごく貧乏臭く隠れるように営業している看板もない不思議な店だったが、料金は町の普通の食堂で食べるカレーよりも少し安い程度だったと思う。

肉は硬くパサついてまるで水牛の肉のようだったけど、最後まで何の肉だったかは教えてくれなかった。ビランドラのせめてもの嫌がらせだったのかもしれない。

 

少し歩いたところで、もう帰るという彼に適当に別れを告げて僕もバスでその場を後にした。どうにもモヤモヤとした終わり方だ。やはりあの手の連中を相手にしていい思い出ができるわけもなかったんだ。

 

翌日、カトマンズから香港経由で日本へ帰国した。

カトマンズを出る頃から腹の具合がおかしかったのだが、飛行機の乗り継ぎの関係で1泊した香港で本格的に腹痛と下痢と吐き気に襲われた。

へろへろになって着いた成田空港の検疫で正直に症状を告白したら、書類を書かされ検便をさせられた。そしてはっきりするまでやたらと出歩くなと釘を刺されて検疫所を放り出された。

 

翌日地元の保健所から家に電話があり、コレラ赤痢などには感染していなかったが、サルモネラ菌が見つかったので自分で病院に行って治療しろとのことだった。

保健所は法定伝染病だと手厚く面倒を見てくれるが、そうでなければなにもしてくれない。それ以来、僕は空港でまじめに検疫の質問に答えるのをやめてしまった。

 

それはさておき、サルモネラ菌の原因はあのネパールでビランドラに連れて行かれた謎のスキヤキ以外に考えられないのだが、あの肉はいったいなんの肉だったのか。

隠れるように営業している店、男ばかりがみんなうつむいて後ろめたそうに(見えた)黙々と食べる肉料理・・・。

最初は、闇で食べさせる神聖なる牛の肉なのかもしれないと思ったが、さすがにそれはないだろう。僕ら日本人が感じている以上にそういうタブーは重たいものだから。

僕の勘があれは野犬の肉だったと囁く。

犬の肉を一度でも食べたことのある人間は必ず犬に吠えられると聞いたことがある。

あれ以来、僕は必ず犬に吠えられるようになった。

他の誰のことも吠えない犬にさえ吠えられるのだから、かなり怪しいとにらんでいる。

それにカトマンズの街にはそれこそ野犬が狩るほどたくさんいたからさ。 

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