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[ま]ぷるんにー!(พรุ่งนี้)

ぷるんにー(พรุ่งนี้)とはタイ語で「明日」。好きなタイやタイ料理、本や映画、ラーメン・つけ麺、お菓子のレビュー、スターバックスやタリーズなどのカフェネタからモレスキンやほぼ日手帳、アプリ紹介など書いています。明日はきっといいことある。                     

[ま]事件の不気味さと共に家族の脆さをあらためて考えさせられた/家族喰い 尼崎連続変死事件の真相 @kun_maa

 

あなたはこの事件を覚えているだろうか。

兵庫県尼崎市を中心に、複数の家族が長期間虐待、監禁、殺害された連続殺人事件であり、死者・行方不明者は10人以上にのぼるという「尼崎連続変死事件」を。

本書は、著者が長期にわたり尼崎に滞在し、現地での徹底取材を通してこの事件の闇の部分とその異常さを明らかにしていく一冊である。

多くの家族を巻き込み、崩壊させていく様はまさに「家族喰い」というタイトルそのままの陰惨さで彩られている。

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多くの養子縁組や離婚や親族が登場するこの事件の人間関係の複雑さは、一読しただけではわからないほど入り組んでいる。家族関係の相関図が載っているのだが、それを何度も見返しながら読み進めなければなにがなんだかわからなくなるほどに。

主犯とされる角田美代子が、2012年12月12日に兵庫県警の留置施設で自殺したことから、一時は騒然とした報道も一気に沈静化し、今ではそういえばそんな事件もあったなあという程度の認識でしかなかった。

だから余計に、事件の真相に近づくほどその不気味さと家族という特殊な人間関係の脆さを感じずにはいられなかった。

 

この事件の特徴は、家族、親族などの血縁間での暴力や虐待が繰り返された点にある。

このことから「民事不介入」という立場を貫く警察の手が入らなかったのである。

ただ、警察についてはあまりにも雑すぎる対応だったのではないかと思えるのだが。

 

この事件発覚直後に、Twitterで話題となったのが事件の人間関係を「サザエさん」の登場人物に置き換えた例だった。それは次のようなものだった。

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事件の実際の人間関係はこれよりもさらに複雑なのだが、この例を読むだけでもその異常性と不自然さは十分伝わるのではないだろうか。

主犯とされる角田美代子は、幼い頃から家族に恵まれず、実の母親から売春宿を斡旋されるなど同情できる部分はあると感じたが、それ以上に、いやそれ故にというべきか、美代子の「家族」なるものへの怨念と憧れの入り交じった複雑な感情が元凶なのではないかと思えて仕方なかった。

 

怨念の部分は、幸せな他人の家族をめちゃくちゃにすることで、憧れの部分は養子縁組や暴力、マインドコントロールによる自分の疑似家族を維持することによって表出していたのではないかと思われるのだ。

角田美代子の介入によって粉々に破壊されていく家族の様子は、僕に「家族」ってなんなのだろうと考えさせる。普通に幸せに暮らしていた多くの家族が、美代子の暴力と巧みな煽動によって、お互いを憎しみ、暴力や虐待が日常化し、自分が助かるためには家族を見殺しにする。そんな異常な世界が満ちあふれている。

そこからは「家族愛なんてこの程度のものだ」という、美代子が憧れながらも手にすることができなかった家族に対する歪んだ考え方がむき出しになっているようで思わず戦慄し、震えすら感じる。

力による支配こそが家族を維持するために必要不可欠であると信じ、その考えを実践したのが角田美代子だったのだと思う。

本書の中で、著者は次のように考察している。

だが実際のところ、美代子が思い描いていた”家族”とは、一般的にイメージされるものよりも、どちらかといえば暴力団の組織に近いものだった。血のつながりよりも義理のつながりが優先されることはもとより、トップである”親”がいて、”子”はそれに絶対服従という、完全なる縦社会なのである。

美代子はみずから築き上げた角田ファミリーという血縁関係のない”家族”を維持するために、外部の血縁関係を持つ家族からの搾取を続けた。その際には執拗なまでに、家族間での暴力を強要し、実行させている。それは血縁というつながりが、いかに脆いものであるかを自分の”家族”に見せつけ、相手の家族に思い知らせる意図があったのではないだろうか。カネと同時に、彼女は自分が絶対君主として君臨できる、結束の強い”家族”を手に入れようとしたのだと思う。(P.266)

そして、その自分が作り上げた”家族”に裏切られたと感じたから角田美代子は自殺したのではないかと結論づけている。

 角田美代子の自殺により、事件の全貌が明らかにされることはないのかもしれない。それでも、まだ行方不明の人がおり、報道こそされないものの現在も捜査は継続されているはずである。事件が「忘れられないようにするためには、誰かがしつこくするほかない」と著者も書いているように、忘れてはいけない重い事件であることは確かだ。

 

事件について感じたことは上に書いたとおりなんだけど、家族の絆の脆さっていう点はとても心に刺さった。普段、家族だからわかり合える、家族は特別とか簡単に考えちゃうけど、角田美代子なんてわけのわからないおばちゃんが介入しただけで簡単に絆なんてバラバラになっちゃったってこと。別にその家族が特別だった訳じゃない。それなのにお互いを憎み合い、暴力を平気でふるい、死にさえ至らしめる。

そして周りを見回せば、そんなおばちゃんが介入するまでもなく、勝手にバラバラになる家族なんて珍しくもない。だからこそ、家族だから、血がつながっているから当然わかり合える、助け合えるなんて甘えた考えじゃなく、ちゃんと家族を維持する努力をしなけりゃ家族なんて簡単にバラバラになっちゃうよって話ですね。まあ、家族を顧みず自分勝手に好きなことしかしてない僕が言える立場じゃないことは百も承知なんだけど。 

家族喰い――尼崎連続変死事件の真相

家族喰い――尼崎連続変死事件の真相

 

 

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