[ま]日本が世界一「貧しい」国である件について/正論で表現も刺激的なんだけど @kun_maa
Twitterで著者の@May_Roma氏のtweetを拝見していて、けっこうその言葉使いがひどかったり、汚い言葉も平気で使っているので、いったいどんな本を書いているのかという興味と本書のタイトルに魅かれて読んでみた。
第一印象は、Twitterでの言葉使いとは全く違って、ちゃんとした言葉で書かれているんだなというもの(当たり前か)。
でも、タイトルについては「釣られた感」が否めなかった。
日本は確かにある意味「貧しい国」であるという著者の主張は認めるが、それが「世界一」かというと本書の中でそのようなデータは示されていないし、本文でも「世界一」貧しい国だとも言及されていない。
僕だって日本はいろいろ問題は抱えているけど、「世界一貧しい」国だとは思わない。
「貧しい国」だと言う根拠も、OECDの調査結果や政府の白書などのある程度信頼のおけるものを引用していたり、海外の大学や本屋での日本の扱いの変化を取り上げているのは公正だとしても、自分の周囲の外国人が「言っていた」「質問された」などの言葉を根拠にしている部分が多分にあって、それって著者の周囲の外国人が属している社会的階層次第でいくらでも変わるし、あまり根拠にされてもなって感じ。
恐らく彼女の周囲の外国人は中流階層あるいは上流階層の人たちだろう。
日本と違って海外の多くの国では、その人が属する階層によって使う言葉も話題も文化も異なる。「貧しさ」や「価値観」に対する考え方もその階層の人々の意見であり、彼女の周囲の外国人たちが「言っていた」からというのはそのまま客観的なデータとは言えない。著者自身は客観的な意見としてそれらの言葉を引用しているつもりなのだろうが、それを多用されても説得力に欠ける。
著者自身の主張自体には納得も共感もできるので、ちょっと残念に感じた。
書かれている内容は簡単に言うと、すごくまともである。
先にも書いたけど、共感できる部分も多い。
しかし、書かれている内容に新鮮さは感じなかった。
日本企業の悪習や日本人を呪縛する世間という「空気」、教育制度の欠陥、落ちぶれた日本経済の実態、日本人のお上信仰と自分で考える力と自己主張の無さ、記者クラブ制度を代表とする日本メディアの欠陥、仕事における専門性の重要性や人口減少・高齢化社会の到来による女性の社会進出の必要性、多様な考え方や文化を許容する必要性など、本書で取り上げ、主張していることのどれをとっても、今まで誰かがどこかで主張してきた既視感のある内容ばかりで、悪く言えば「聞き飽きた」ものばかりで新たな視点や発想のオリジナリティが感じられないのだ。
そういう意味では、これまでの正論をわかりやすくつぎはぎして、危機感を喚起している本だとは思うが、独自性や新たな気づきに欠けるという物足りなさを感じさせられた。
確かに、書かれていることはもっともだし、表現は刺激的なんだけど。
これまで多く語られてきた「日本人論」の範疇から抜け出せていないところが、その刺激的な「釣り」タイトルと相まって底の浅さを感じさせることに繋がってしまっているようで残念な気がする。
そうは言っても、内容はもっともなことでわかりやすいので、軽く読んで危機意識を感じるには手軽な一冊。
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