[ま]星守る犬/おとうさんと愛犬の温かく悲しくて切ない物語 @kun_maa
「星守る犬」とは犬が星を物欲しげに見続けている姿から、手に入らないものを求める人のことを表すという。
望んでも望んでもかなわないから望み続けるーただそれだけー人は皆生きてゆくかぎりー「星守る犬」だ。
どこにでもある平凡な家庭と拾われてきた犬。
小さなすれ違いや変化がやがて気づかないうちに大きなものとなり、いつのまにか家族はバラバラになり、見捨てられるおとうさん。
作者も「あとがき」で書いているが、「おとうさん」はこんな結末を迎えなくちゃならないような悪人じゃない。むしろ、不器用でまじめな人間だ。
いいか悪いかで言えば、間違いなく「いい人」だ。
それでも「普通の生活」を失い、家族に見捨てられ、犬だけに慕われて人生を終えることになる。
どこまでも純粋に、まっすぐにおとうさんのことを慕う犬のハッピーとおとうさんの、南に向かう最後の旅。
お父さんとハッピーの関係がとても微笑ましいだけに、ラストはガツンとくる。
犬の純粋さに心が締めつけられる。
おとうさんのハッピーを思う気持ちにジーンとくる。
「おとうさん」「おとうさん」って話しかけるハッピーの心の声が胸に刻まれる。
人間なんてちょっとしたボタンのかけ違いで、誰だってこの「おとうさん」になる可能性はある。
たしかにほかに取る道はなかったのか?と問えば、おとうさんの選んだ道は間違っていたのかもしれない。
社会保障制度に助けを求めるべきだったのかもしれない。
でも、ハッピーがいたことでおとうさんは幸せだったんだと思う。
全てを失ったけど、心通じ合うハッピーが傍らにいるだけで、幸せを感じていたおとうさん。
後半の「日輪草」がおとうさんとハッピーの物語に花を添える。
そしてそこでもまた主人公の奥津と犬の別の物語があり、おとうさんとハッピーのことを調べるうちに、自分の犬への愛情に後悔の念を膨らませていく。
いずれも犬の純粋さに思わず涙してしまった。
子供の頃以来犬を飼っていない僕ですらグッときてしまったのだから、現在犬を飼っている人にはかなり響くと思う一冊である。
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